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メロンおばさんの真相
それは、私が子供の頃に囁かれていた噂である。

(町外れの水道塔には、近づくな。メロンおばさんに追われるぞ・・・)

実に、奇怪な噂である。
しかし、子供の頃は、これが、心底恐かった。

今でも、水道塔を遠くに望むだけで、当時、噂に聞いていたメロンおばさんの影や奇声を、簡単に想像できてしまう。

その話は、あり得ない内容にも関わらず、恐怖心だけは今も私の中に潜んでいる。
俗にいうトラウマだ。

さて、その日。
私は近所に住む叔母の家を訪ね、友人から送られて来たというピーナッツを分けてもらった。
旦那の好物なのだ。

しかし、私は、そのまま叔母と話し込むことになり、帰路に着くのが遅くなってしまった。

外に出ると、もう夕方。
夕暮れ時のたゆんだ空気が心地よい。

私は家路を急いだ。
引っ掛けてきた下駄が、カランコロンと音を立て、誰もいない通りにこだまする。

しばらくすると、道路わきに林立する街灯に、ぼんやりと灯がともりだした。

日が落ちたのだ。


そんな中、私は突然、気がついた。

この道に沿うフェンスの向こうに、あるもの。
フェンスの向こうに広がる闇の中に、あるもの。

それが、あの水道塔だということに。


普段は、何気無く通過してしまう道なのに、今日はなんだか、とても気にかかる。

私は歩みを緩めた。
カラン・・コロン・・
下駄の音がリズムを崩す。


(町外れの水道塔には、近づくな。)

私は、闇を見つめた。
何かが潜んでいるのでは無いか?
そんな気がしたのだ。

(メロンおばさんに追われるぞ・・・)

その時である。

暗闇から、一匹のネコが飛び出してきた。


ぎゃぁ

私は情けない声を上げ、バランスを崩した。

災難である。
私は足を溝にはめ、フェンスに顔を引っ掛けてしまったのだ。

「痛てて」
片方の頬を、だいぶ掠ったようだ。
傷になってなければいいのだけれど...

私は、体勢を整え、辺りを見回した。

ピーナッツ、ピーナッツ、ピーナッツ...
先ほどの衝撃で投げ出されたピーナッツがあっちこっちに散らばっていた。

私は自分で自分が情けなくなり、半分泣きながらそれらを拾った。


「メロンおばさんのバカ・・」

私はなんとなく、この災難をメロンおばさんのせいにした。


その時である。

背後で、断末魔の声が響いた。
私は驚いて振り向いた。

そこには、小学生と思しき子供が一人、街灯の下で立ち尽くしていた。
その目は、大きく見開かれ、真っ直ぐ、私を凝視している。


私は、立ち上がった。

何か分からないが、弁解の必要がありそうだ。

しかし、痛めた足がうまく動かない。
私は変によろめいた。

その刹那。

「ぎゃぁぁぁ」

小学生は、再び叫び声を発し、踵を返して走り去ってしまったのだ。

「ピーナッツおばさんが、出たぁぁぁ」


・・・そんな言葉を残しながら。

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物語 | 02:10:00 | Trackback(0) | Comments(12)
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