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20050616184437.jpg

photo by albireo



あぁ、もうそんなになるんやねぇ。
ゆきちゃんが、お嫁に行ってから、一年になるんかぁ。




隣の食卓から、お母さんの声が聞こえてくる。

「うん。早いもんやねぇ」
私は、ぼんやりと答えて、また視線を庭先に戻した。

そこには、ナナカマドの花が、濃緑の背景に浮かび上がるかのように、白い輝きを放っている。

湿った空気の中で、瑞々しい緑の中で、その花を見ていると、あの日のゆき姉ちゃんを思い出さずにはいられない。


あの日、まっさらな白無垢に身を包んだゆき姉ちゃんは、この部屋で、両手をついて、お父さんとお母さんに挨拶をしていた。

私はこの場所で、皆が流す涙を、ただ、ただ眺めていたんだ。

その日も、やっぱり今日みたいなお天気で、梅雨独特の湿った空気が、私たちを包んでいたっけ。

だからかな?
なんだか、あの日の思い出は、全てが、夢の中の出来事みたい。


あれから、一年。

今日は、ゆき姉ちゃんが、家に帰って来る日だ。
ゆき姉ちゃんが嫁いだ先はとても遠い場所。
だから、今回の帰省は本当に久しぶりなんだ。

お陰で、お父さんもお母さんも、昨晩から全然落ち着かない。
今朝だって、もう何度もゆき姉ちゃんに電話しちゃってたんだ。

「あ・・・」

玄関に車の停まる音がした。
するとすぐ、玄関の引き戸がカラカラ開く音が聞こえてきた。

「ただいま~。お父さん、お母さん。ご無沙汰してました。」

ゆき姉ちゃんの声だ!
玄関からの風が、かすかにユリの花の香りを運んでくる。

「ゆきちゃ~ん、おかえりなさい」
お母さんがすぐに玄関まで走っていった音が、何だか面白い。

「お元気でしたか?」

玄関から声がする。
さざめくような笑い声が風に乗ってやってくる。

もうっ。いつまで玄関で話をしているんだろう?
早く、部屋に上がってきたらいいのに。

私は、シャンと背筋を伸ばし、ゆき姉ちゃんが顔を覗かせるのを、今か今かと待っていた。


もうすぐだ。

廊下を歩く足音が聞こえる。


もうすぐだ。

ホラ、ドアに手をかける音がする。


もうすぐだ。

もうすぐ、ゆき姉ちゃんに会えるんだ....


モウ、スグ・・・



「わぁ~、この部屋、全然、変わっていないのね」
ゆきは、その部屋に入るなり、声を弾ませた。

懐かしい家具。懐かしい景色。懐かしい匂い...
一年間も家を出ていたのに、この部屋に来ると、まるで昔の自分に戻ってしまうかのようだ。

「・・・あなたも、変わらずにいてくれたのね。」
ゆきは、窓際に座っていた人形をそっと手に取った。

「嬉しいわ」
ゆきは、昔のように、その人形に語りかけた。

「ただいま、あ~ちゃん」

・・・ユキネエチャン、オカエリナサイ





このお話は、albireoさんの『白い花の誘惑』にトラバしています☆
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-06-15
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物語 | 18:00:00 | Trackback(0) | Comments(14)
コメント
上手い!
素晴らしい、傑作です!
短編小説が好きな僕には、たまらない作品です。
途中での、文体の変え方も見事でした。
そこから、雰囲気が変化して、最後の五行目になって、ようやくこの「妹」が誰なのかに気が付きました。
感動して、何度も繰り返して読んでしまいました。
素晴らしい作品を、読ませて頂いて、とても嬉しく思います。
2005-06-16 木 17:22:14 | URL | albireo [編集]
>albireoさんへ
・・・早過ぎます。いや、しかし、『下書き』を確認していなかった私がおバカなのですね...
ガックリ

追伸:楽しんでいただけてよかったです。ひとえに、albireoさんのお写真が無かったら出来ない物語でした
2005-06-16 木 19:09:03 | URL | ナナ [編集]
そうでしたか。
花の名前が○○になっていたので、これはまだ推敲の途中だったのかな?とは、思っていました。
ところどころ、手が加えられて、更にいい作品になっていますね!
こうして、ナナさんの物語の挿絵として見ると、自分で撮った写真なのに、なんだかちょっと綺麗に見えます。
ありがとうございました。

追伸 : 『白い花の誘惑』の続きの記事で、この物語を紹介させて下さい。
よろしく、お願いします。

2005-06-16 木 21:30:47 | URL | albireo [編集]
albireoさんへ
はぁ・・・どうぞ。(←何だかやっぱり、照れくさいのです)

追伸:この物語のことばかり考えていたので、我が家の庭はまだ未確認です。すみません...(苦笑)
2005-06-16 木 23:05:36 | URL | ナナ [編集]
いい!!すんごくいい!!です。
2005-06-17 金 02:23:16 | URL | ブタゴリラ [編集]
白無垢のイメージ
また、ナナさんの物語を読む機会を得て、本当に嬉しいです。
白無垢のイメージと花の名前、なんだかほんわかした
空気と、ちょっとだけ他人行儀な元家族とのくすぐったい距離感が伝わってきました。
いつもながら、ナナさんの物語には、独特の透明感がありますね。
albireoさんの写真も更に引き立つような感じです。
ナナさん&albireoさん、素敵なコラボに感謝!です。
2005-06-17 金 06:30:10 | URL | dino-tail [編集]
ブタゴリラさんへ
ありがとうございます☆
ちょっと、物語は、公開するのに勇気が要ります。
照れ恥ずかしいんですよ(笑)
2005-06-17 金 10:28:12 | URL | ナナ [編集]
dinoさんへ
と・と・と・と・透明感?
はぁ・・・ありがとうございます
物語は、いつもながら、やはり、こそっと公開してしまうに限ります。
やっぱ、照れるので。

でも、いつも読んで下さってありがとうございます

前回のように、こそっと公開するのではなく、これからは、この裏ブログでひっそりと公開していこうと思っています。

実は、インスピが沸いたときだけ気ままに更新していくつもりだった裏ブログ。気付けば、毎日のように更新していたりして...

また、気が向いたときにでもお寄り下さいね。
2005-06-17 金 10:32:33 | URL | ナナ [編集]
もう今日は驚きの連続です~。
albireoさんの写真からナナさんの文章へ来たら…。
ショートショートの世界ですよね。

私とナナさんは多分10歳ほど違うんですが、10代の頃、星新一さんとか阿刀田高さんのショートショーートを読んでたときの気分が甦りました。
日常生活でのちょっとした妖しさとか恐怖とかは阿刀田さんに近いような…。

また読みに来ますね~。
2005-06-17 金 11:03:45 | URL | Gotton Factory [編集]
Gottonさんへ
ありがとうございます☆
・・また、何やら嬉しいような、困ったような、照れ恥ずかしいようなコメントをありがとうございます...
『恐怖』・・・(にやり)
実は、この『妹』をぬいぐるみにするか、人形にするか迷いました。
ちょっと恐怖っぽくしたかったので、人形をチョイス。
成功したってことかな!うれしい~☆
2005-06-17 金 12:59:21 | URL | ナナ [編集]
こんばんわ(^-^)
ここ増えていますね、そっと覗かせてもらっていいですか?

今回はalbireoさんのところからきたんですけど、
写真の白い花もステキだし、ナナさんの文章にほろりときちゃいました。

2005-06-19 日 00:49:04 | URL | maya [編集]
mayaさんへ
ようこそ、おいでませ☆
私の裏ブログへ...

ここは、きままにのんびり更新していく予定の場所です。
たま~に、遊びにいらしてくださいね
2005-06-19 日 00:58:41 | URL | ナナ [編集]
ナナさん。才能ありますよね。
凄く。なんかこういうの沢山読んでみたいです。
でもってショートムービーとか撮っちゃいましょうよ。言葉を映像にするのはとても難しいですが。albireoさんの写真とのコラボ素敵ですもん。
やってやれない事はなさそう。
2005-06-19 日 16:45:35 | URL | beer [編集]
beerさんへ
ありがとうございます☆
こんな裏ブログまで、丁寧に全部読んでくれているのですね。

沢山読みたいと言ってくれて、ありがとう。
でも、そうそう思い浮かばないんだな♪

またどなたかの記事にインスピを受けて、ふと更新するかもしれません☆

追伸:ショートムービーって何だか、beerさんならではのアイデアですね♪
2005-06-19 日 20:55:09 | URL | ナナ [編集]
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